レーシングカート奮闘記 (第二弾)  by N

  

この状況を打開するヒントを与えたのがU宮副部長である。彼は普段、積極的に知恵や労働を絞り出すタイプではない(除:自分の物)けれど、某自動車用品店へU宮副部長と出かけた際「三好自動車っつー店がカートに詳しいらしいけぇそこ行きゃあいんじゃね」といつもの口調ながら有益な情報をもたらしてくれた。

その後N上の調査によると、どうもそのショップは普通の自動車屋さんではなさそうだという事がわかった。ともかく、熱いことだけはわかった。アツいのである。

それからしばらくはカートの件はとん挫した。自動車部自身の身辺整理に追われることになった為だ。こちらの件がひと段落した10月半ば、ふと三好自動車の件が話題に上り、開学記念日である10月22日に行ってみることにした。大学側もなかなか粋な休みを作ってくれるもんである。ありがたや。

その日、三好自動車へ出かけたのはK下先輩O田(1回生)そしてN上の3人である。とりあえず、エンジンマウントがほしい気分だったのでエンジンをK下先輩のアルトワークスの後席へねじ込み、三好自動車の門をたたいた。

 
  

そこに居たのは、神ともいうべき御方であった。名前をダイレクトに出すわけにもいかない気がするので、Kゾー師匠と呼ぶことにする。師匠は持って行ったエンジンの型の古さにビビっていた。20年くらい前の物かもとの事。ヴィンテージすぎるのである。我々が古伊万里の茶碗や魯山人の掛軸を見る時と同じ表情である。

ドン引きされながらも、師匠はあちらこちらからパーツを集めてくれて、エンジンマウントどころか、タイヤ&ホイール、シート、チェーン、スプロケットなどを格安若しくは無償でくれたのである。あまりに多くの収穫を得た3人は感涙にむせばむ他を知らなかった。

師匠は我々に多くの知恵を授けてくれた。兼好法師が「先達こそあらまほしけれ」と言った意味が大変よくわかった。無知の知であった。ここから、修理は劇的展開を迎えることになる。三好自動車から帰ってくるなり、エンジンからタイヤからチェーンから組めるものはすべて組み上げた。カートがあまりに古すぎたせいでリアホイールがはまらず、これを書いている現在、近日中に師匠のもとを訪れ今時のハブを手に入れることで解決されると思われる。

その後、燃料チューブなどもセットしキャブクリーナーを吹き付けながら、何とかエンジン始動までこぎつけた。エンジンがかかった際の感動といったらない。




今後は残る欠品部品を組み付けるのみである。ついに自走し始めるのである。これこそ がレストアという修理の醍醐味ではないだろうか。とりあえずは、自動車練習場内で部員の加速・減速ポイントの把握や、クリッピングポイント理論の把握に用いられるほか、BOXとガレージの間を移動する最速の乗り物となると思われる。新入生歓迎会でも活躍するのかもしれないが、あまりにも車高が低いため馬術部のトラックへ突っ込めば、多分ドライバーがヘルメットをかぶっていなければ大事故になることが予想される。気をつけよう。

また、ジュニアカートであるため(実はね)シートサイズが小さめである。体格が大柄な方は、蟻地獄現象になるか、横Gのせいで骨盤骨折になるかのいずれかを選択していただきたい。師匠から戴いたシートは、カートにポン付け出来ないので、まだ取り付けられていない。それが付けばあまり心配はいらないのだが。

単なる思い付きで始めたカート修理がここまで来るとは、自分が発端であるにもかかわらず無責任ながら驚きである。完成まであとわずかなので、安く楽しく仕上げていきたい。

カートについてこんなに長く記述することも珍しいかと思うが、貴重な体験且つ有意義なものだと思いもすれ、ここまで書いてみた。本業の法律でもここまで長々書くことはめったになく、自分にびっくりである。HP担当のH田さんに頼まれて請け負った仕事だが、楽ではない。眼球疲労で目ん玉が取れそうである(終り)
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